メモ:90年代中国対日民間賠償請求運動の童増氏に関する記述を見つけた

 注目されているのが、中国老齢科学研究センター副研究員の童増氏(三七)。九一年、全国人民代表大会全人代=国会)に、建議書を提出したのをきっかけに、日本への民間補償請求を、全国的な運動として取り組み始めた。九二年九月には、「中国民間対日索賠(賠償請求)委員会」を結成。現在、被害者のネットワークを広げている。これまで、五十万人が署名に応じたという。北京の日本大使館には、賠償を求める手紙が多数、届いている。

 童増氏は、「日中戦争での損害額は三〇〇〇億ドル。中国政府が放棄したのは、国家賠償の一二〇〇億ドルにすぎない。民間賠償の一八〇〇億ドル(約一九兆円)は、日本に請求できる。と主張。民間被害の範囲として、①非戦闘員の殺害、傷害②強制労働③女性に対する暴行④細菌兵器の人体実験と使用による被害⑤爆弾による殺傷や個人と法人の財産被害、など十項目を挙げている。

 被害の掘り起しのなか、童増氏らは、中国で約四十人の元従軍慰安婦を確認したという。

 民間補償請求の動きについて、九二年九月、当時の呉学謙副首相は「政府とは別のことだ。民間が正常なルートを通じ、彼らの要求を訴えることは正常なことだ。日本政府がこの問題を適切に解決すると思う」と語った。中国政府は民間の活動に関知しないという立場を明確にするとともに、日本政府の対応を眺める態度を示した。

 しかし、実際には、党も政府も民間補償要求の動きを抑制している、との見方もある。九一年から毎年、全人代に、日本に民間賠償を求める提案がなされているが、正式議案として取り上げられ、採択されるという事態にはなっていない。党や政府内部には、この問題をめぐって、なお議論があるようだ。

「国民にやめさせようとすれば、逆に党や政府が国民の批判を受ける」「人民の代表である人民政府として、賠償を放棄したはずだ。民間賠償を求めるのは、人民政府の立場と矛盾しないか」という意見もあるらしい。外交への影響や世界の実例なども研究しているようだ。

 童増氏は、「この問題が早く解決すると、日本を制約する圧力みたいなものがなくなる、という人は多い。政府のなかにもいる。私は、被害者が生存しているうちに早く解決させたいと思う。外交とは切り離すべきだ」と語っている。

---朝日新聞戦後補償問題取材班『戦後補償とは何か』朝日文庫(1999)pp.83-5   *年齢は1994年単行本発行時のもの

 

 映画「太陽がほしい」*1で童増氏の活動が紹介されていたのを観てから気になっていたのだが、姓を<董>と思い込んでいたのでググっても見つけられずにいた。

 

 <童増>でググると案の定というかなんというか、あっち側の方々にとってはお馴染みの名前のようだ*2

 かつては中国公安に拘束されたり、中国政府から迫害に近い仕打ちを受けていたが、ここ10年ほどは<反日デモ>や<釣魚島>問題や、日本企業提訴運動の主導者として非常に存在感を増しているようだ*3

 近年では会長を務める団体、が唐鴻臚井碑返還運動を起こし(2014年)*4、昨年2015年にはノーベル平和賞候補にも選ばれている*5

*1:

human-hands.com

 

*2:

f:id:torewolf:20160129235638p:plain

*3:

時事通信社北京特派員 城山英巳「<テーマ:中国の膨張を止められるか>日本車を破壊し尖閣に上陸する「反日デモ」の猛威 それらを主導する著名活動家に本音を聞いた」

文藝春秋SPECIAL 2014夏 2014年06月10日 

blogos.com

*4:「中国民間団体、初めて日本の皇室に文物返還を要求」チャイナネット2014年8月11日 

japanese.china.org.cn

*5:「民間の対日賠償請求第1号がノーベル平和賞候補に」
人民網日本語版 2015年03月28日 

j.people.com.cn