乙武洋匡はすごい

正直、本当に正直にいうと、知った当初は何だか障碍を仕事を得る種にしているようで余りいい印象がなかった。だが、この人は、確かに障碍を利用しているのだが、その真剣さ、覚悟のようなものが違う。甘えとして障碍を利用しているのではない、持って生まれた障碍を全力で<利用>しているのだ。障碍がなければ持ち得なかった視点、感じ方を100%仕事に、生きる上で活かそうとしている。孫正義のような在日出身者が、自らの出自をハンデとせずに世の中を背筋を伸ばして渡りきろうとする武器にしているのと同じような強さなのだろう。こういう書き方をしたからといって、<その他>の障碍を持った人々やハンデを背負った人々を甘えているなどと貶めたいわけではない。僕が一番嫌いな発想が<自己責任論>という名の棄民や他者に無根拠に強いる犠牲の正当化だ。それに自己肯定のためだけに「日々を全力で生きるべき」なんて云ってる奴はただ我儘を通すエクスキューズを欲している人間に過ぎず、軽蔑している。ただ、乙武洋匡のような人は生き方が苛烈で鮮烈なのだ。単に人に見せたいがために全力なのではない。やりたいことがあるから狡猾に全力を揮える。こんな生き方を誰もができるわけがないし、またしなければならないことはない。ただ、カテゴライズや敵味方の意識などを超えた次元で、曹操に抱く感情に近い。とにかく感嘆せざるを得ない。