生き証人

高校で日本史を取らなかったせいもあるのかもしれないが、日本の近代史、特に第二次世界大戦前後の歴史上の事件は、どれもこれも調べれば調べるほど一体何が本当のところなのかわかりにくくなる。

大体、日本の場合、この戦争当時のキーマンが敗戦国にも関わらず非常に大勢生き残ってその後も歴史上重要な役割を果たしたりしている。こういった例はなかなかないだろうし、それほど多くの生き証人がいたのなら、こんなにも情報が錯綜することもなさそうなものだが、逆に重要なポストに留まり続ける人間が多かったゆえに、タブーとして歴史が曖昧にぼかされてきたところもあるのだろう。

例えば、三笠宮崇仁という人、昭和天皇の弟で存命なのだが、びっくりするくらい歴史上の様々な重大事件に関わっている(可能性がある)らしい。未だに喧々諤々右だ左だ大喧嘩しているような話題だって、この人に直接訊いてみれば、疑問氷解とはいわないまでも、大分ましな議論になる可能性だってあるのだ。この人は割と率直に色々なことを語ってきたようだが、それでも遠慮があってか、インタビューなんかを見てももっとずばりと踏み込めないものかと思うし、歴史家らしいので、本音ではもっとちゃんと話しておきたいことも多々あるのではないだろうか。

よく議論になっている天皇の血筋はどこからきたものか、なんてのも、DNA鑑定させてもらえばいいんじゃない?なんて思わないでもないし(もちろん強制はできないだろうが、皇族の中にも依頼すれば意外とあっさり受けてくれるひとも一人ぐらいいるんじゃないだろうか)、天皇は万世一統か?男系DNAは受け継がれてきたか、なんてのも、まぁ江戸時代くらいまでなら遡って調査できないこともないだろう。

もちろん他人様の家族、ご先祖のことをあれこれ突っつきまわすように詮索するのは趣味が悪い気もするが、そういう遠慮をする一方ではあからさまに当事者不在で勝手に大喧嘩を繰り広げている。それぐらいならストレートにやった方がなんぼかすっきりすると思うのだ。

歴史というものは結構厄介なもので、今そこで起きた事件の当事者が目の前に生きていたとしても、刑事事件でもない限りその人の体験を語るように強制することはできないし、刑事事件であっても利害関係が生まれてくれば、やはり証言の信憑性は疑わしい。そもそも事実とはそれぞれの主観によって異なる形で認識され表現されるものであるという大前提は措いても、やはりまだ100年も経ていない過去の出来事なのだから、そのアウトラインくらいはより増しなかたちで記録し後世に伝わって欲しいなぁ、と。今はまぁ大体本当のところ何が起きていたのか大体でもわかっていながら、憚ってはっきりとは口にしないというひとがまだ生きているのだろうが、100年後には、本当に当時何があったのか全然よくわからない、ということにもなりかねない。これだけ記録技術が発達した時代にそれではちょっとどうなんだろう、と。