The Doors 'The End' ~わたくしのフェイヴァリットミュージックベスト10 その5

 インプロ的な部分が多く、荒削りですが、それがまた魅力。この'The End'に限らず、後年の完全にカチッとスタジオワークでつくられた曲群にはない魅力がThe Doorsのファーストにはあります。やはりアマチュアでライヴを通じて鍛え上げてきた曲のみが持ちうる強みでしょうが、それを初のメジャーリリースで最高に近い形で録音に残せてしまったところがこのバンドの凄いところ。

 『地獄の黙示録』で用いられていたのが有名なようですが、僕の場合はThe Doorsを知る前に視たので、え、どこで流れてたっけ?って感じでしたw。印象に残っているのは安直ですが伝記映画『ドアーズ』での使用シーン。この曲の「父さん、あんたを殺してやりたい 母さん、あんたをヤッてやる」という有名なくだりは、レコードでは「ヤッてやる」のところが誤魔化した録音になっているのですが、映画ではきちんとw発音しています。本来は計算された持っていき方なんでしょうが、それをいかにも即興的なノリの中での感情の激発のようなインパクトを与えてまったく作為的に感じさせないJim Morrisonの演出力に魅了されました。演劇などにも造詣の深かったかれらのバックボーンは並大抵のものではありません。

 これほど有名な曲にもかかわらず、カヴァーするアーティストや追従者がほとんど見当たらないのは(The Stoogies(Iggy Pop)が不器用ながら真剣に真似した曲を出してますがw)、このバンドの卓越した構成力と創造力、知性と野性抜きではこれほどまでの緊迫した世界を作り上げることが不可能だからでしょう。真の意味で乗り越えることが出来ない画期的な曲だと思います。