東京の冷たい壁にもたれて

 んん~、ゾンビーズwww。

 はぁぁ~、はぁぁ~って蒼い吐息がええですねぇw。これ、やっぱ甲斐さんなんでしょうか。

 僕は甲斐バンドではアルバムとしては未だに『英雄と悪漢』と『ガラスの動物園』がフェイヴァリットなんですが,この頃の適度な湿り具合の甲斐さんの声と、かれらが聴きながら育ってきた洋楽への憧れ丸出しの曲、唄い方、アレンジが絶妙にマッチしているところが何ともいえず気持ちええです。後年の成熟した声ではこのアンニュイィ~な雰囲気は出せない。

 東京の冷たい壁にもたれて 1メートル 君は60センチ
 とてもステキさ

 それは 君にとってはタダの遊び文句
 本気で 真に受けたのは この僕
 だけどステキさ

 自分よりも背のちょっと高い女の子との付き合いというシチュエーションはともすればガリバー的なエグいキッチュなイメージに陥りがちですが、ここではフランス映画的な思春期の退廃感と憧れの入り混じった、乾いていながら適度に湿り気を帯びた甲斐さんのヴォーカルのざらついたフォルムがまさに曲のムードを決定付けています。ジャケ写がまた、この曲のイメージにぴったり。

 音楽がHIFI化するにつれて、こういうざらついた質感を持つ乾いたムードのアルバムが消えていったような気がします。音はクリアになるけど、ムードは失われていくような。そういう残念さもあって、この2枚のアルバムが好きなのかも知れません。

 大人になりかけの刹那さが心の表面をざわざわと撫ぜ上げ、頬に幼さを残した倦怠に身を浸した少女への憧憬が頭の中に住み着いて離れません。

 燃えるカラダ寄せ合って 崩れていったあの
 ウソっぱちの 夜