ゾンビは電気グルーヴの夢を見るか

ゾンビは眠ることがあるのか?

ゾンビ自体一度動物的な死を迎えている死者なのだから、このような疑問を持つこと自体ナンセンスかもしれない。だが、映画を観ていると、明らかにゾンビにも活動を停止しているときがあるようである。例えば、普通の屍体のように倒れていて、人間がそばを通った途端にやおら足に組み付いてきたり、あるいはロッカーの中に隠れていて、人間が部屋に入ってくると飛び出してきたり。
 
それはたまたま人間が通りかかったときにゾンビ化が完了したのに過ぎない、という見方も出来るかも知れない。しかし、いつもいつも人間が通りかかったときに偶然そうなるというのはおかしいので、人間の発散する匂いなどが、ゾンビウィルスかなにかに食料として検知され、活性化してゾンビになるのを早めるのかもしれない。

だが、ロッカーの中に隠れているというのは、まだ生きた人間のときにゾンビに咬まれながらそこに逃げ込んで身を潜めているうちにゾンビウィルスが繁殖して人間としての死を迎えた、という説明も可能だが、それにしてもあれだけいつもいつも潜みやすいところからばかり出てくるというのを説明するには苦しい。

だが、この仮定を一歩進めてみるとどうだろう。もし、ゾンビが人間の生体組織を死に至らしめる形で寄生するある種のウィルスの宿主として活動するものである、という仮定が成り立つとするなら、そのウィルスは食虫植物的に、普段はエネルギー源(寄生した屍体)の消耗(腐敗による解体=獲物を求めて移動させることが不能になる、それではウィルスは新たに分裂、増殖ができない)を避けるためにじっとしていて、主食とする人間の生体反応を検知すると増殖したウィルスが新たな宿主を求めて活発化し、ゾンビ化した屍体を運動状態にする、という推測もなりたつのではないか。

だが、実際の映画での描写は、ゾンビという呼称は共通していても、その行動形態の描写はかなりヴァラエティに富んでいる。夜になると動き出すゾンビもいるし、人間であったときの習慣の名残りにしたがって行動するゾンビもいる。これらをすべて同じ種類のものとみなすことには無理がある。我々人間がかれらが持つ<死んでいる>という共通項のみを捉えて十把一絡げに<ゾンビ>と呼称しているが、実はそれぞれに種も違えば成り立ちも異なるのかも知れない。

かようにゾンビの生態解明への道は長く険しい。現在も世界中で新種のゾンビは生まれ続けており、事態は収拾するどころか刻一刻とより困難さを増している。今我々に必要なのは、正しいゾンビ知識とその理解に努めるたゆまぬ探求姿勢ではないだろうか?