Time After Time

 最近は50年代から60年代のジャズにも食傷気味で、かといってフリージャズや70年代のアヴァンギャルドもテーマが弱くて詰らない。大体70年代のマリファナ系音楽は酒でも呑んで聴かなければトロ過ぎるのであまり好きではないのだ。

 と、いうわけで最近好きなのはMiles Davis"You're Under Arest"。1年前の俺なら決して聴こうと思うことはなかっただろうエレクトリック・マイルスだ。80年代の音楽の特徴は、ポップスへの回帰だと思う。60年代後半、70年代の無軌道なインスピレーションの氾濫は、ある意味では贅沢といえるかもしれないが、音楽におけるスタイルの持つ侵さざるべき聖域を余りにも気安く荒廃させてしまった時代だったともいえる。音楽における型を取り戻し、モダナイズしようとする挑戦の中にMilesもいたのだろう。このアルバムの中に充満したドラマ性、削ぎ落とされたストイックな音は、ポップスの復権を謳っている。

 ギリギリまで研ぎ澄まされた意図と熱情。それに時代のスピードを得て、音楽は常に飛翔する。