恋愛平行線

「溢れる水を湛えた プールも今は涸れはてた この愛のように」

 平成の大渇水、といっても恐らくすでに覚えていない世代も出てきているのだろう。

 KAIFIVEでの活動を経ての、ソロ活動再開第一弾アルバム『太陽は死んじゃいない』(1994)収録のこの曲は、当時の世相を色濃く映した歌詞を持つのだが、今聴いても古びて聴こえないのはどうしてだろう。それどころか、現代を言い当てた予見的な歌にすら聴こえる。

 アップテンポな曲でありながら、その内容はひたすら荒廃が日常化しつつある風景を映している。やがて、トレーラーパーク暮らしすらこの国でも非日常的光景でなくなる未来すら見通した、「トレーラーハウスで」(甲斐バンド、1999)がこの曲の流れを継いだAOR路線で登場する。甲斐よしひろが描くノスタルジックなアメリカの情景は、時を追うごとに私たちのリアルとなりつつある。