Tonight I Need Your Kiss(1998)

 小室哲哉と共同作業をしたこの頃から、甲斐よしひろの書く歌詞は長くなってきた(タイトルも)。その前のアルバム『GUTS』、『PARTNER』辺りではリズムに乗せる音数もぎりぎりまで削るスタイルを追求していたように思えるが、小室哲哉の作曲スタイルもあって、再び歌メロ重視に回帰している。

 甲斐よしひろの矜持として、この当時に流行っていたような「日本語の単語を途中でブッタ切る」ような歌詞の付け方(「同じ日のことを 思い だ して」のような付け方)はしない、というものがあるが、極めて日本語の乗せにくいこの曲でも、そのルールを破っていない。「ペンダント代わりにした 部屋の鍵を君が引きちぎった」という部分の歌い方など、甲斐にこんな歌い方のテクニックがあったのか?と思ってしまった程だ(失礼(^ー^;)。

 日本語でドラマを歌う、その才能においては甲斐よしひろには初期から卓越したものがあったが、それにしてもこの曲から現在にいたる系譜においては、かつての可能な限り無駄な言葉を削ったハードな世界に比べ、よりリリカルに、そして多少饒舌になっても丁寧に想いを歌い込むようになってきているように思える。それは最新作となるカヴァーアルバムの選曲の方向性にも通じ合うものがあるようた。

 甲斐よしひろは時代を呼吸し、いまも変わりゆくことを恐れていない。