ショートショートショート「I am The Resurrection」

世界が混沌の極みに達した時、彼は生まれ落ちた。ひとは彼を再臨と呼び、また反キリストとも恐れた。でも俺は知っているんだぜ。奴の尻には尻尾が生えているんだ。奴には三つの眼があるんだ。しかもあいつは私生児なんだぜ。掃除の時間、俺は教室で女子の大勢見ている前で奴の半ズボンを下ろし、囃し立ててやった。奴は悲しそうな目で俺を見上げ―――6か月と6日で生まれたあいつは未熟児だったのさ。きっと生まれた時間は6時だったんだろうよ!―――、俺に触れて何かつぶやいた。俺は枯れ木の色に変わりばったりと倒れた。翌日クラスの半分は疱瘡でいっぱいになり腐り落ちて死んだ。抗議にやって来た俺の両親は目玉と舌と脳味噌を焼かれた。教師は三人石になって固まった。吠えた犬は尻から裏返るし。奴の義理の親父がやってきて止めるまでに学校は砂の神殿になって崩れ落ちた。親父に云われて俺たちはみんな生き返り、学校は輝く聖堂になった。大人になって俺はあいつの使徒と呼ばれ聖戦を戦い、いまじゃ世界中の家の壁に奴の逆さに吊るされた像があり学校にはΩのかたちに意匠された666のマークが掲げられているが、奴のあんな悲しそうな顔を見たのはあれっきりだったな。
 
五百字未満。天声人語より短い(笑)。
 
少年イエスの逸話には超能力少年みたいなのがあって面白いと思いいつか自分でも書いてみたいと思っていたのですが、下らないネタが思いがけなく浮かんだので使ってしまいました。
 
ヘミングウェイの短編にイエス処刑の仕事に従事したローマ兵たちが対話するものがありましたが、ああいうリアリズムで神話に切り込むようなアプローチっていうんでしょうか、結構好きですね。学生時代は国語の時間に密偵松尾芭蕉の小説とか構想して遊んでました。