#小説

ショートショートショート「I am The Resurrection」

世界が混沌の極みに達した時、彼は生まれ落ちた。ひとは彼を再臨と呼び、また反キリストとも恐れた。でも俺は知っているんだぜ。奴の尻には尻尾が生えているんだ。奴には三つの眼があるんだ。しかもあいつは私生児なんだぜ。掃除の時間、俺は教室で女子の大…

ショートショート 「クロスロード」

白けた砂が服の中にも口の中にも入って砂利砂利し男はぺっぺと唾しながら煙草を吸っている。風の中で煙草の先がぜえぜえいうように早い息で明滅する。男は十字路に立って四五体の真ん中に倒れた死体を見張っている。真昼の太陽は砂嵐で血管の妖しい色に霞む…

自作短編小説「アブダクション」(2)

鮎川は不安がる学級の女友達数人と連れ立って帰ることになったということで浦上と僕だけが残った。考試期間中は部室に無用に入ってはいけない決まりになっていたが、僕たちは放送室に入って僕が持ってきたCDを流しながら今日のことを話した。浦上は霊感が強…

自作短篇小説「アブダクション」(1)

とうとう、学級で残っている生徒は菊池綾音と僕だけになってしまった。 きれいすぎる緑―――チョークの粉の波模様がない黒板を眺めていると、何だかミュージックビデオの中にいるみたいな気分になってくる。二人きりになっても、僕は教室左側の窓から2列目の1…

栗本薫

高校時代、図書館に置いてあった著作を『翼あるもの』というタイトルに惹かれて開いたときに、立派なホモ小説だった衝撃は今も忘れません。 この作家に関する思い出はこの程度しかないのですが、ジェネレーションとしては、まぁ僕の十代ど真ん中のラノベ前夜…

ボヘミアン・オデュッセイ

お盆に列車で長距離移動しなければならなかったので、出発前に本屋に寄って小説を物色しました。 最近までずっと小説をあまり読まない期間があったので、何を読んでいいのかわかりません。以前ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』が僕には読みやす…

傷ついたのは誰?

というタイトルの小説が筒井康隆の作にある。 この小説はいわゆる不条理ものだが、世の中結構、ある人に深く心が傷つけられたと感じたときでも、実際にはその相手の方が先に僕のせいで深く傷ついたと感じていたりする。 こういう気まずい状態が嫌で、僕はな…

変身

変身、というテーマは古代ローマの時代から絶えざる関心の的だったみたいで、オウィディウスという詩人は、ギリシア神話の翻案を書くときに、その表題をそのものずぱり、『変身物語』としました。 この主題は、現代でも、カフカの『変身』や、筒井康隆の『怪…

謎のオンキヨー技術力(システム紹介② CDプレイヤー ONKYO C-1VL)

僕の使っているCDプレイヤーはオンキヨーのC-1VLです。オーディオ機器、特にデジタル系では、<こ んなにすごいんですよ~、これは究極ですよ~>ッちゅう感じのなんだかわからないんだけど凄いんだろ うと思わせる能書きがつきものですが、その中でもこのCD…

んー、好きよ ジャッキー (チェンに非ず)

CD-RはCDに比べて反射率がかなり低いので、音楽CDをコピーしていても、たまに特定のアルバムをまと もに再生できない装置(CDプレイヤー)に出会うことがあります。 僕の手持ちのアルバムの場合、くるりの『The World is Mine』と、もう一つ、ジャクリーヌ・…

ジョンブル気質

またも<ナルニア>ネタですが・・・。 ファンタジー、と一言でいいますが、そこにもお国柄というのがあらわれます。 英国のファンタジー(というか児童文学)に共通するのは、子供にしか見えない世界、移ろいやすいま ぼろしのようなときを舞台にすることで…

ライオンと魔女と衣装箪笥

「ライオンと魔女」を見ました。『ナルニア国ものがたり』ですね。 とはいっても、現在公開中らしいディズニー版ではなく、昔BBCがテレビドラマ化したもののDVDのほう です。アスランがフルポリゴンで動いとるのなんか見たくないわー!ってことで。 『指輪物…