公会堂で、また貴方と一緒になった

師よ、僕は貴方が嫌いだった

あの頃貴方はいつも僕らを打ちのめした
それは正しさによってではない
僕らが子供で、貴方がたが大人である
ただそれだけの事で僕らの声を奪い
足を縛り眼を覆い
疑問を口にする事すら封じた
年若いけもののしなやかさを恐れたのか
僕らは貴方がたの恐怖だったのか
僕は貴方を憎んだ

今や貴方は惨めだ
僕は痛みすら感じる―――貴方の姿に
だが貴方はどこまでも僕に対立し続ける
どこまでも僕に反論を重ねる
どこに行っても貴方と私は対峙する
―――そして貴方はいつも敗れ続ける
方々の演壇の上で
あらゆる主題で
僕は喝采をもって
あるいは畏怖をもって賛同を得る
―――そうだ、僕は畏れられることすらできる
だがかつての貴方のように ただ、より長く生きているという理由からではない

僕は約束する
富を、健康を、平和を
事実、そうなった
我々は栄え、増えている
生活は清潔になった 夜の突然の闇に怯えることもない
冬の寒さにも

一方で貴方は聴衆を不安にさせる
―――だかそれも一時だけだ
人々は賢い
人々は選び取る
何が彼らに必要なのか 何を手放したくないのか
判っているのだ だから恐怖に挫けない
僕は彼らの目が、頬が 僕の言葉の進むにつれ
僕の抱いているのと同じ誇らしさに輝き紅潮するのを見る

「おめでとう、また君の勝ちだね
君は(そして君たちは)賢く、強い 正しくすらある
―――だが、勝ち続けて得るものは本当に君らがその手におさめたと云えるのだろうか
勝ち続けて最後に何を手にするというのだろう?ほんとうに手にするものとは」

それは、必要な事だったのです
私は確かに急ぎ過ぎているかもしれない けれどそれは必要な事なのです

「そうかもしれない 
だが、なぜ君は私を生かし続けるのだろう?

君の(そして君たちの)手に入れた強さが
君の手に入れた力が
君の手に入れた栄光が
災厄に名前を変えたとき―――
君たちが悔恨するときのために私はいなければならないのだろうか、

―――プロメテウスよ」


私は目を伏せた
そこには演壇のへりがあった

沈黙が流れた

公会堂から人々は去って私は独りだった いつも通り

私は面を上げ、正面の席に向けて口を開いた