小島

その静かな夏の朝小島で 軋み声を上げる頭蓋骨をおさえながら 
魂を救ってくれた友人たちを撃ち殺したのは俺だった

かれらひとりひとりの名前も顔も覚えてる 
ある者は明日俺とビールを呑み ある女とは来年デートをし
他の何人かは老年の楽しみを共にした

どうしてやったんだ 警官が俺に尋ねた 見ず知らずの若ものたちを?
俺は云ってやった 「頭の中の無数の声に耐えられなくなったんだ」 

でもそんなのどうでもいいことなんだ
いまその明日はすべて消え去り 俺の頭の中はとても静かだ
 
たそがれにその坂道を降りていくあんたがた そんなに連れだってどうしたんだね

わたしたちは殺されたのです とっても冷酷な殺人者に
とても恐ろしい目をしていました その中は無でした
それを覗きこむと同時に わたしの頭は吹き飛んだのです

ねえおじいさん とっても怖かったんですよ
どうしてわたしたちでなければいけなかったんでしょうか
とても気持ちのいい夏の朝に わたしたちは小島に集まっていただけなんです

空の蒼がいまにも手に届きそうで わたしたちは小道を歩きながらつい笑いあいました
互いに見知らぬ者も多かった・・・・ でもわたしたちは楽しかったんです

とてもきれいな夏の朝に わたしたちは殺されました
見知らぬもの同士のわたしたちは 見知らぬ殺人者に
いま、長い長い坂道を わたしたちは一緒に辿ってゆきます