スカートの中身は?

 絵空事を描く、というのは大変なことだ。

 例えばひとりの高校生の女の子がいると考える。女の子が朝起きるということを文章にするとき、その娘はいったいどんな髪型をしているのか、どんな格好で寝ているのか、どんな部屋に寝ているのか、寝起きの顔を気にする方なのか、起きたらまずなにを考え、なにをするのか・・・。かの女について色んなことがわかっていなければならない。その娘が吸う空気の色、その娘の汗をかいたときの髪の匂いまで知りたいと思う。

 だが、かの女がきゃ~、素敵~(表現が古い!)とときめく男の顔、体型、声、臭い、はじめてのキスの感触、そういったものまで心から理解しようとするのは困難だ。というよりも、嫌悪感が先に立つ。

 対人関係というものは、純度99パーセントくらいの幻想とほんのちょっぴりの共感でできていると思う。決して、恋人や自分の子どもが相手であろうが相手を完全に理解しようとしてうまく行く人間関係はない。

 架空の人間を描くことは、心理学者や文化人類学者、人体解体殺人犯の所業に似ているように思えるが、実際には違う。それらは全て相手に自らをどのようによく語らしめるかという作業だ。人間を描く、ということはその娘の内側から、その眼を通して世界を見、しかも感じることは異なるということだ。

 『マルコビッチの穴』、俳優としてさして魅力的とも思えないこのハゲ(失礼)があたかもエイリアンのごとく頭を<スナッチ>される対象に選ばれたのは、かれの性的部分が淡白だったからなのか、それとも逆なのか。

 しまった、タイトルに二日連続?がついちゃった。明日も続けなきゃシリーズって言い訳がきかない・・・。