エレファント

 少年少女たちの美しさが太陽の光のように溢れるフィルム。

 ハイスクールに乗り込んで無差別射殺を行うふたりの少年が「俺たち、今日死ぬんだよな、俺まだキスしたことないんだよ」といって狭いシャワールームで唇を交わすシーンがあるが、少しも嫌味なところがない。

 大人になりきる前の16,7年代の若者たちというのは、どうしてこうも美しいのだろう。幼児や児童を天使のようだ、という表現があるが、僕の目から見ればかれらはまるで大人のグロテスクなミニチュアのようで、不気味にさえ感じることが多い。

 若者たちの中に撮影時点で本職の役者はひとりもいないが、その動きはプロのわざとらしいうそ臭い演技よりもずっと説得力に満ち、真の意味で優美だ。

 死の空っぽさ、生の空っぽさに大人の賢しらさが意味づけようとする意味を少年少女たちがひとつずつ破り捨てていくことにより、この映画は世の汚泥から免れ、フィルムの中でだけわれわれが見出すことができる天使たちの輝きを留めることに成功している。