甲斐バンド 全曲レビュー その6 「バス通り」


ようやくシングルにたどり着きました(^^;。

改めて聴いてみると、アレンジ、構成共に驚くほどに「裏切りの街角」と似ている部分があると思うのだが、勘違いだろうか?

明らかにこの『らいむらいと』のアルバムでは異質な曲で、本格的な海の向こうのロックの音と同等のサウンドで、しかもきっちり日本語ロックとして成立させるという、甲斐バンドサウンドの方向性をはっきり意識したつくりになっている。

前の曲のレビューでも書いたが、窮屈にも思えるほどのロックの様式美に則ったアレンジは、確実に『英雄と悪漢』以降の甲斐バンドのフォーマットであり、純朴な印象さえあるこのアルバムの中では浮いた存在なのだ。

聴いていると、ここまで<向こうの>ロック寄りのアレンジでありながら、どうして日本のフォーキー(フォークミュージックではなく)な印象が残るのか、と驚かされる。これこそが甲斐よしひろがあえてバンドを組んでまでやりたかった本格的な日本語ロックの解法だった。だが、世間はそのブンガク的な詩の世界観だけを見たのか、甲斐バンドをそこらのアイドル・フォークグループと十把一絡げに見た。それが彼らを『英雄と悪漢』以降の反動的なスリルの世界観へ向かわせた大きな動機となったのだろう。

この曲、こっそり入っているヘタウマっぽいホーンがいいですな。本当に聴けば聴くほど、このアルバムの音作りはセンスがいいです。