どんな音を再生するか

 オーディオに興味がある方なら知っておられる方も多いでしょうが、某かる○とすほふという有名なサイトさんがありますね。

 ここのオーディオコーナーの記述内容は、次元が違い過ぎて理解できない部分が多いのですが(僕の音楽再生装置なんてたかだか15-20万位「しか」かけていませんが、それでもう冷や汗ものです(涙)。この方はオーディオ周りに千万(!)単位で投じておられるのではないでしょうか)、それでもひとつだけ共感できる記事があります。現代の音楽は、オーディオ再生のみを目的とし、生演奏を前提とせず製作されているものが出てきているという内容のところです。

 オーディオショップさんなんかに行くと、大抵お客さんが聴いているのはJAZZやオールドロックといった種類の音楽です。クラシックを基準にされている方も多いのでしょう(僕はまだ実際にそういう人をあまり見たことがありませんが)。こういった方々はきっと、JAZZやクラシックのファンでコンサートやライヴにも何度も足を運ばれていて、その生の演奏の感動の再現を求めておられるのだと思います。

 ですが、僕はクラシックのちゃんとしたコンサートなんて行ったこともないですし、JAZZも同様です。オアシスや甲斐よしひろ(汗)なんてベタベタなロック、ポップスが好きなただのあんちゃん上がりです。確かにJAZZはいいなー、なんてお店なんかで聴いてて思いますが、正直JAZZやクラシックのアルバム一枚聴いてたら飽きます。

 むしろ僕がCDなどを聴いていてよりぞくぞくするのは、このCDにこんな音が隠されていたのか、という驚きと、そこからこれまで自分が気付かなかったアーティストの音に込めた意図が新たに読み取れる気がしてくる、分析と解釈の快感です。

 よくあることなのですが、ライヴにいって、そこで演奏される音の中に、CDにはなかった新たなアレンジ(解釈)が加えられていると思ったのが、これまでと違う再生装置でCDを聴いたら実はちゃんとその解釈が含まれていたのに気付くことがあります。そんなときに感じる音楽製作者のひとびとの恐ろしいまでのインテリジェンスと技能には、畏怖を感じます。

 かなりの自己陶酔なのでしょうが、このようなしてやられた!という感覚が、僕にとってより深い描写を可能にする再生装置を求める原動力なのです。音楽として聴く分には邪道ないき方なのだろうと思います。多くのロックを音楽として楽しむには、ボーズやデノンなんかのシステムが一番合っていると思います。ですが、僕はむしろポップスがより好きなタイプの人間なんだと思います。クラシックの録音はそれとして非常に再生の難しいものであると思いますが、正直JAZZのような音数の少ない音楽を<きれいに>鳴らすのはそんなに難しくないと思います(表現としてJAZZになっているのかはまた別でしょうが)。ポップスをラジカセで聴く以上の音できちんと鳴らすのは大変です。

 あほな欲望でしょうが、これが僕のささやかな<いい再生>への努力なのです。


今日のBGM

Cassandra Wilson『New Moon Daughter』

 思いっきり本文と矛盾するようですが、このアルバムの一曲目"Strange Fruit"はいっつも視聴用に聴いています。この曲で大フューチャーされているウッドベースカサンドラさんの声の音の深さをどのように表現できるかでその機材の性格が結構わかる気がします。でも、超クールなアレンジなのに、最後はえらく泥臭い(ダサい)ですね、この曲。JAZZというのはそういう音楽なんでしょうか。