芸術とエンターテイメント

 最近の日本映画はひどい。

 と思う僕がいる。

 実際には日本映画というものを、もう子供ではない、と物心ついて以来、過去から現在に至るまで、自発的に観たことなどほとんどないにも関わらず、である。

 <最近>の、<日本>の<映画>が、ひどい、嫌だ、と感じる僕の感性を他人に主張するには、まずいくつもの点を明らかにする必要がある。まず、映画はそもそもひどくはなかったのか、次に、日本の映画は本当に海外の映画に比べてひどいのか、最後に、最近のものに比べて、過去の日本映画はひどくなかったのか。

 僕には最初の設問の半分にしか答えられる自信がない。映画は決してひどくはなかった、少なくともひどくないものもあった。だが、その他となると、日本の映画に比べて海外の映画が絶対的に優れていると主張するには根拠が少ないし、また、過去の日本映画で優れていると思えるものも思い浮かばない。

 そもそも僕に最近の日本映画をひどいと感じさせる根拠というのが、テレビなんかでたまたまやってた『キャシャーン』や『ゴジラファイナルウォーズ』なんかの一部分を観ての感想と、それに似た感想を抱くひとが結構いるらしい、という情報に過ぎない。

 大体『キャシャーン』や『ゴジラ』が日本映画を代表しうるのか?という問題はあるが、それならそもそも日本映画の代表的存在とは何か。『Always 三丁目の夕日』や『ゲド戦記』、『踊る大捜査線』だろうか。『誰も知らない』とか『HANA-BI』だろうか。『ポケットモンスター』、あるいは『電車男』かも知れない。だが、そのどれも僕は観たことがない。

 結局、それらの映画をまったく観に行く気になれないというだけのことだが、それは映画の中身よりもその<大衆受け>を狙った広告戦略に反発を覚えているからに過ぎない。

 だが、より多くの観客に観に来てもらい、収益を上げることは映画の産業にとってもいいことではないのか?一部の人間がその内容を<浅い>などと批判しても、映画など楽しめればいいものではないか。

 結局、映画を何となく神格化していたこちらの態度が悪い、ということになりそうだ。映画は小説などとは違い、より開けた表現だ。個人の屈託など介在する余地はない。デートムービー、ファミリームービーで上等。

 でも、やっぱり僕は1500円以上払って観にいく映画には普通の面白さ以上のものを求めてしまう。貧乏性だろうか。